「Kindle出版したい!」
そう決めた勢いで、いきなり原稿を書き始める人がいます。
Canvaを触っているうちに表紙が先に完成し、「本文はこれからです」という人もいます。
KDPのアカウント画面を開いたものの、入力項目を見て疲れてしまい、そのまま放置する人もいます。
最終的に必要なものが揃えば出版はできますが、初めてのKindle出版で、わざわざ遠回りする必要はありません。
出版までの作業を大きく分けると、次の7工程になります。
まず全体を見て、自分が今どこにいるのか確認してください。

① 出版前の準備
いきなり原稿を書く前に、Kindle出版の仕組みをざっくり知っておきます。
Kindle、Kindle本、KDPは何が違うのか。自分で出版すると、どんな作業が必要になるのか。KDPにはどんなルールがあるのか。
この段階で細かな設定まで暗記する必要はありません。
知らないまま進めると、原稿が完成してから「そんな決まりがあったの?」と戻ることがあります。反対に、KDPのヘルプを最初から全部読もうとすると、本を書く前にお腹いっぱいになります。
KDPはAmazonが提供するセルフ出版サービスです。著者自身が書籍情報、原稿、表紙などを登録して出版できます。
AIを使う予定がある人は、KDPのAIに関するルールも確認しておきましょう。
現在のKDPでは、AIが実際の文章、画像、翻訳を作成した「AI生成コンテンツ」は申告が必要です。自分で作った文章をAIで推敲したり、誤字を確認したりする「AIアシスト」は申告不要とされています。
この違いは、今後の記事で詳しく扱います。
失敗しやすい例
出版方法を調べているうちに、
「ロイヤリティは?」
「カテゴリーは?」
「出版後の修正は?」
「ペーパーバックの背幅は?」
と話がどんどん先へ進み、肝心の本が何も決まっていないケースです。
今必要でない情報はいったん置いておきます。
② 本の設計図を作る
出版の仕組みがわかったら、自分の本について考えます。
何を書くのか。誰に読んでもらうのか。読者は何に困っていて、この本を読み終わったときにどうなってほしいのか。
著者自身の立場も整理しておきます。
少し先を歩く経験者として書くのか。その分野を教える先生なのか。仕事として長く携わってきた専門家なのか。
ここが曖昧なまま書き始めると、途中で内容が広がりやすくなります。
テーマと読者が決まったら章立てを考え、目次を作ります。
タイトルは仮で構いません。
わたしの出版サポートでも、原稿を書いてからタイトルを変更することはよくあります。正式なタイトルは、本の内容が見えてから決めたほうが判断しやすいからです。
AIに50案出させて止まった人
AIは、この工程でかなり使えます。
テーマについて壁打ちをしたり、章立ての抜けを探したり、自分では思いつかなかった見出しを提案してもらったり。
ただ、数を出せば決めやすくなるとは限りません。
以前、出版サポートで「タイトルが決まりません」と相談された方の画面を見ると、AIが作ったタイトル候補が50個並んでいました。
本の中身は、まだありません。
50個から一つを選ぶことに時間を使うより、仮タイトルを一つ置いて原稿を書いたほうが早かったでしょう。
AIは案を出してくれますが、決めてはくれません。
③ 本文を書く・整える
設計図ができたら、本文を書き始めます。
目次の上から書いても、書きやすい章から始めても構いません。
わたしは「第1章から書けないから進まない」という人には、書ける章から始めてもらうことがあります。自分の経験談なら書ける、という場合もあるからです。
下書きの段階で文章を完成させようとすると、書いては直し、また書き直す作業が続きます。
まず全体を書き、あとから推敲する。執筆と仕上げを分けたほうが進みやすくなります。
AIは「執筆係」だけではない
AIは文章を書かせる以外にも使えます。
例えば、
- 文章の意味が初心者に伝わるか確認する
- 誤字脱字を探す
- 説明不足の箇所を指摘してもらう
- 事実確認が必要な箇所を洗い出す
といった使い方です。
ただし、AIが作った文章を確認せず、そのまま大量に貼り付ける方法はおすすめしません。
著者自身の経験や判断が消えると、誰が書いた本なのかわからなくなるからです。
AIを使う場合も、最後は自分の原稿として責任を持って確認してください。
KDPのルール上も、AIに実際の文章を作成させた場合は、その後に大幅な編集をしても「AI生成」と扱われます。
④ Wordで出版用の原稿を作る
本文が書けたら、KDPへ入稿できる原稿に整えます。
わたしはMicrosoft Wordを使っています。
普段からWordを使っている人なら、見出しや目次などの基本的な機能を覚えれば電子書籍の原稿を作れます。
KDPは現在、電子書籍の原稿としてDOC/DOCXに対応しています。Wordの複雑な書式は変換時に崩れることがあるため、Amazonも出版前のプレビュー確認を案内しています。
ここで、文章を書く作業と原稿を整える作業を混ぜないほうが楽です。
Wordでは、
- 見出しを設定する
- 章の区切りを整える
- 目次を作る
- 画像を配置する
- 改行を整理する
執筆と原稿制作は分けて考える
ここで止まる初心者はかなりいます。
「文章は全部書けたのに、Wordがわからない」というケースです。
文章を書く能力とWordを設定する能力は別物です。
Wordが苦手なら、入稿用ファイルの制作だけ専門家へ依頼する方法もあります。
⑤ 表紙と申請情報を準備する
原稿ができたら表紙を用意します。
電子書籍の表紙は、本文ファイルとは別にアップロードします。
Amazon KDPが現在対応している電子書籍の表紙画像は、JPEGまたはTIFF形式です。推奨サイズは高さ2,560px×幅1,600pxと案内されています。(Amazon Kindle ダイレクト・パブリッシング)
Kindle推奨サイズは少し縦長の画像になります。ペーパーバックを作る方は、紙本の判型(サイズ)と電子書籍の表紙サイズをあわせることもできます。
自作するなら、本の内容と読者がわかるデザインになっているか確認してください。デザインが苦手なら、表紙だけ外注する方法もあります。
この頃には、KDP申請で入力する情報も準備します。
例えば、
- 本の内容紹介
- キーワード
- カテゴリー
- 販売価格
などです。
申請画面を開いてから全部考え始めると、そこで作業が止まります。先に文章や候補を用意しておけば、入力作業に集中できます。
⑥ KDPで出版申請する
原稿、表紙、書籍情報が揃ったらKDPへ登録します。
原稿をアップロードしたら、必ずプレビューを確認してください。
KDPのオンラインプレビューアーでは、タブレット、スマートフォン、Kindle電子書籍リーダーでどう表示されるか確認できます。品質チェック機能も用意されています。(Amazon Kindle ダイレクト・パブリッシング)
特に確認したいのは、
- 見出し
- 改ページ
- 目次リンク
- 画像
- 文字化け
- 不要な空白
です。
Wordではきれいに見えていたのに、Kindleへ変換するとレイアウトが崩れる場合があります。
KDPのオンラインプレビューアーでは、タブレット、スマートフォン、Kindle電子書籍リーダーでの表示を確認できます。品質チェック機能もあります。
すべて確認したら販売条件を設定し、出版申請を行います。
申請後はAmazonによる審査が行われ、フォーマットやコンテンツガイドラインへの適合が確認されます。通常は、出版スタートまで最大3営業日程度が目安ですが、本の種類などによって異なります。(Amazon Kindle ダイレクト・パブリッシング)
わたしも初めて出版したときは、「Kindle本を出版」のボタンを押すのが怖かったです。
間違っていたらどうしよう。変な本がAmazonに出たらどうしよう。そんなことを考えました。
でも、ここまで来たら、確認するものはかなり絞られています。
書籍情報に間違いがないか。原稿は正しく表示されているか。表紙は合っているか。
確認が済んだら申請ボタンを押してください。
⑦ 出版後の確認・告知・改訂
Amazonに販売ページができたら、終わりではありません。
まず販売ページを確認します。
タイトル、表紙、内容紹介などが意図した状態になっているか見てください。
自分の本は自分でKindleストアから購入できますので、電子書籍の実際の表示を確認しておきましょう。
出版前に何度チェックしていても、
「誤字が残っていた」
「いらない一文が入っている」
「画像が見づらい」
ということはあります。
Kindle本は、出版後に原稿を更新できます。ただし、大幅な内容変更は新しい版として出版する必要がある場合があります。(Amazon Kindle ダイレクト・パブリッシング)
だからといって、雑な状態で出版してよいという意味ではありません。
公開前にできる確認は済ませ、その後に見つかった問題を修正していく考え方です。
販売ページを確認したら、ブログ、SNS、メルマガなどでも出版を知らせます。
「Amazonに出したから、そのうち誰かが見つけてくれる」
この考えでは、なかなか見つけてもらえません。
出版後の告知まで含めて、一冊の出版作業と考えています。
自分が今どこにいるか確認する
ここまで読んで、「やっぱり作業が多い」と感じた人もいるでしょう。
見るのは7つ全部ではなく、自分の現在地です。
テーマが決まっていないなら②。
原稿を書いている途中なら③。
本文は完成したけれどWordがぐちゃぐちゃなら④です。
原稿を書いている人が、今からKDPの販売価格を細かく調べる必要はありません。表紙を作っている人が、出版後の改訂方法まで覚えておく必要もありません。
ネット検索もAIも同じです。
今の作業に必要なことだけ調べる。
AIに質問すると、頼んでいない情報まで返ってくることがあります。便利だから全部読んでしまい、また別の疑問が出て検索を始める。
これを繰り返すと、知識は増えているのに本は進みません。
出版までの全体像は知っておく。
作業するときは、一つだけ見る。
わたしが出版サポートで著者さんと進めている方法も、ほぼこれです。
初心者が遠回りしやすい4つの失敗
原稿より先に表紙を完成させる
表紙づくりが楽しくなり、本文が進まなくなるパターンです。
タイトルや内容が変われば、結局作り直すこともあります。
最初からタイトルを決め切ろうとする
仮タイトルで十分です。
本文を書いたあとに、内容と読者に合わせて調整できます。
KDP画面だけ先に攻略しようとする
登録方法を覚えても、本がなければ出版できません。
必要なタイミングで確認したほうが覚えやすく、作業にも直結します。
全工程を同時に調べる
これが最も疲れます。
検索結果、YouTube、SNS、AIの情報が混ざり、何から手をつければいいかわからなくなります。
初心者が途中で止まる理由も、この情報過多と順番の混乱が大きく関係しています。
Kindle出版の進捗チェックリスト
- □ Kindle・KDPの基本的な仕組みを確認した
- □ 本のテーマを決めた
- □ 読者を決めた
- □ 目次を作った
- □ 仮タイトルを決めた
- □ 本文を書き終えた
- □ 原稿を推敲した
- □ Wordで入稿用原稿を作った
- □ Kindle表示を確認した
- □ 表紙を準備した
- □ 内容紹介、キーワードなどを準備した
- □ KDPへ原稿と表紙を登録した
- □ プレビューを確認した
- □ 出版後の販売ページを確認した
- □ 告知した
- □ 必要なら原稿を改訂した
全部にチェックが入る必要があるのは、最後です。
今は次の一個だけ見ればOKです。
よくある質問
Kindle出版は何から始めればいいですか?
まずKindle出版とKDPの基本的な仕組みを確認し、その後に「何を書くか」「誰に書くか」を決めます。最初からKDPの細かい設定や表紙制作へ進む必要はありません。
原稿と表紙はどちらを先に作りますか?
初心者には、本文をある程度完成させてから表紙を作る方法をおすすめします。本の内容が固まった後のほうが、タイトルやデザインを決めやすいためです。
Kindle原稿はWordで作れますか?
はい。KDPはDOC/DOCXに対応しています。複雑な書式は変換時に崩れる場合があるため、アップロード後にプレビュー確認が必要です。(Amazon Kindle ダイレクト・パブリッシング)
Kindle本は出版後に修正できますか?
原稿の更新は可能です。ただし、大幅な変更は新しい版として扱われる場合があります。変更できる部分とできない部分があります。タイトルと著者名は基本的に変更できません。(Amazon Kindle ダイレクト・パブリッシング)
まとめ:Kindle出版は「全部覚える」より「現在地を知る」
Kindle出版には、確かにやることがたくさんあります。
だからこそ、全工程を一度に理解しようとしないことです。
全体像だけ見て、「私は今③にいる」とわかれば、③で必要なことだけ調べられます。
それが終わったら④へ進む。ネット検索もAIも、この使い方なら便利です。
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公式情報・出典
- Amazon KDP「電子書籍の原稿に対応しているファイル形式」(Amazon Kindle ダイレクト・パブリッシング)
- Amazon KDP「電子書籍のファイル形式に関するヒント」(Amazon Kindle ダイレクト・パブリッシング)
- Amazon KDP「電子書籍の表紙画像の必要条件」(Amazon Kindle ダイレクト・パブリッシング)
- Amazon KDP「本のコンテンツをアップロードしてプレビューする」(Amazon Kindle ダイレクト・パブリッシング)
- Amazon KDP「出版と審査」「タイムライン」(Amazon Kindle ダイレクト・パブリッシング)
- Amazon KDP「原稿の更新」(Amazon Kindle ダイレクト・パブリッシング)

