「Kindle出版には興味がある。でも、本に書けるほどの実績がない」初めて出版を考える人からよく聞く悩みです。
実績という言葉から、「売上1000万円」「何千人を指導」「有名な資格を持っている」といった目立つ数字や肩書きを想像すると、自分には何もないように見えてしまいます。
しかし、本の材料になるのは大きな成功実績だけではありません。仕事で何度もやってきたこと、人から繰り返し聞かれること、自分が失敗してやり方を変えたこと。
今の自分には普通になっている経験が、初めて取り組む人には知りたい情報である場合があります。
この記事では、「実績がない」と感じている人が、自分の中からKindle本にできる材料を探す方法を具体例とともに整理します。
「こんなの普通」と思っている経験を見直す
長く続けてきた仕事ほど、自分では価値に気づきにくくなります。毎日やっているから特別なことではないんですね。
たとえば、Kindle出版を何度も経験している人なら、KDPの管理画面を開くことも出版申請することも普段の作業です。
初めて出版する人は
「この欄には何を入れるの?」
「間違えて登録したらどうなる?」
「出版ボタンを押してほんとに大丈夫?」
経験者なら迷わないところで止まります。
仕事でも同じです。
毎月作っているExcelの資料。新人に何度も説明してきた作業。お客さんから繰り返し質問されること。
本人には「誰でも知っていること」に見えていても、まだ経験していない人にとっては知りたい情報です。
最初に「実績があるか」を探すより、自分が何度もやってきたことを探すほうが、本の材料は見つけやすくなります。
本にできる経験を4つの場所から探す
もし、あなたがKindle本のテーマに悩んでいるなら、次の4つを振り返ってみてください。
1.仕事で何度もやってきたこと
現在の仕事だけでなく、過去の仕事も対象です。
たとえば、
- 新人教育を10年間担当した
- 毎月顧客向けの資料を作ってきた
- クレーム対応を任されていた
- 小さな店舗を5年間運営した
華やかな数字がなくても、長く続けた仕事には判断や工夫が蓄積されています。
「何をしていたか」だけではなく、「初心者はどこで困るのか」「自分は何を見て判断していたのか」まで掘り下げると、本の材料になります。
2.人からよく聞かれること
同じ質問を何度も受けるなら、その情報を必要としている人がいます。
相談メール、仕事の問い合わせ、講座での質問、友人から聞かれることを思い出してください。
たとえば、
「どうやって片づけているの?」
「その資料、どうやって作ったの?」
「50代から副業って何から始めた?」
自分では簡単に答えられる質問ほど見落としがちです。
3.過去の自分が困っていたこと
今は解決していても、最初からできたわけではありません。
資格試験なら、「勉強しているのに点数が伸びなかった」
副業なら、「何を仕事にすればいいのかわからなかった」
介護なら、「突然始まって、仕事とどう両立するかわからなかった」
その頃に何を試し、どこで失敗し、何を変えたのか。同じところで止まっている人に伝えられることがあります。
4.失敗してやり方を変えたこと
成功体験だけが本の材料ではありません。むしろ失敗した経験には、
「何をしたらうまくいかなかったのか」
「どこで間違いに気づいたのか」
「その後どう変えたのか」
という過程があります。
Kindle原稿でも、著者の立ち位置を考える際には、現在の仕事だけでなく、過去の失敗や長く続けてきた活動なども確認する構成になっています。
大きな成功体験がなくても本にできる
副業について本を書きたい人を例にします。
実際の経験が「副業で初めて1万円を稼いだ」なのに、
副業で月100万円稼ぐ方法
というテーマでは、自分の経験から書けません。
AIやネットを使えば、月100万円を稼ぐ方法について情報を集めることはできます。ただ、それを自分の成功体験のように書けば、事実とは違います。
そこで、テーマを自分の経験談にしてみます。
たとえば、
50代会社員が初めて副業を始め、最初の仕事を受けるまで
ならどうでしょう。
何から始めたのか。最初に何を勘違いしたのか。仕事を探して何に困ったのか。初めて依頼されたとき、どんな準備をしたのか。本人しか知らない具体的な話があります。
しかも、同じように「まだ一度も仕事を受けたことがない」初心者にとっては、月100万円の話よりこちらのほうが自分に近い場合があります。
成功した人だけが著者になるわけではない
資格試験について書く場合も同じです。一発で合格した人と、何度も不合格を経験してから合格した人では書ける内容が変わります。
何度も挑戦した人なら、勉強しているのに点数が伸びなかった理由、最初に選んだ勉強方法、途中で何を変えたのか、不合格になったあとどう立て直したのか。
結果だけを見ると、一発合格者のほうが華やかです。ところが、何度受験しても合格できずに困っている読者なら、「何度も不合格だった人が何を変えたのか」を知りたいかもしれません。
教科書原稿でも、資格を持っているという事実だけでは著者の特徴は十分に伝わらず、仕事を続けながら合格したのか、不合格後に学習法を変えたのか、受験者を指導してきたのかによって著者の立ち位置が変わると整理しています。
同じ結果にたどり着いても、そこまでの過程は人によって違います。
その違いが、本の中身になります。
数字は大きさより「事実かどうか」を見る
実績が少ないと、プロフィールを少し立派に見せたくなるかもしれません。でも、決して盛らないほうがいいです。
個別相談を15件行ったなら「15件」。
地域の事業者向けに勉強会を3回行ったなら「3回」。
店舗経営を5年間続けたなら「5年間」。
小さく見えても、事実なら自分で説明できます。
実績は著者を飾るものではなく、読者が本の信頼性を判断する情報です。派手な数字より、本の中に具体的な経験があるほうが読者には伝わります。
自分が経験していないところまで書かない
経験があるから、何でも専門家として説明できるわけではありません。
たとえば、自分が病気を経験した人なら、
「治療中に何に困ったか」
「生活をどう工夫したか」
「本人として何を感じたか」
は自分の経験として書けます。
だからといって、その経験だけを根拠に他人の病気の治療法まで断定できるわけではありません。
投資も同じです。
自分がある投資方法で利益を得たという経験と、
「誰がやってもこの方法なら儲かる」と説明することは別です。
専門的な判断が必要なテーマでは、自分が経験した事実と、資格や専門知識が必要な説明を分けてください。
「ここまでは自分が経験した」「ここからは専門家の領域」
この線をちゃんと引くことが、著者としての信頼につながります。
書けるテーマ/まだ書かないほうがいいテーマ
テーマを考えるときの参考にしてみてください。
| 自分の経験 | 書けるテーマ例 | まだ書かないほうがいい例 |
|---|---|---|
| 50代で初めて副業を始めた | 50代会社員が最初の副業を始めるまで | 副業で月100万円稼ぐ方法 ※経験がない場合 |
| 資格試験に7回挑戦して合格した | 不合格が続いた人が勉強方法を見直す方法 | 一発合格する必勝法 |
| 小さな店舗を5年間経営した | 小規模店舗で実際に試した接客改善 | 全国チェーンの経営戦略 |
| 家族を介護した | 家族として介護生活で困ったことと工夫 | 病気の診断や治療方法 |
| 投資を経験した | 自分が失敗した投資判断と見直した過程 | 誰でも利益が出る投資法 |
判断基準は、読者から質問されたとき、自分の経験や確認できる事実をもとに説明できるか。
説明できない部分が多ければ、自分が書けるテーマからズレているかもしれません。
Kindle本にできる材料チェック
テーマ候補が見つかったら確認してください。
- そのテーマについて実際に経験したことがある
- 初心者だった頃に困ったことを思い出せる
- 失敗したことや、途中で変えたやり方を書ける
- 人から何度か質問されたことがある
- 具体的な場面を自分の言葉で説明できる
- 数字や実績を事実どおりに書ける
- 経験していないことを経験したように書いていない
- 専門家でない分野まで断定していない
- 「誰に何を伝える本か」を説明できる
半分も埋まらない場合は、「自分には実績がない」と決める前にテーマの範囲を小さくしてみてください。
「副業」では広すぎても、「50代会社員が初めて仕事を受けるまで」なら、自分の経験から書けるかもしれません。
立派な肩書きを作ってから出版しなくていい
Kindle出版を考えると、自分より実績のある人が目に入ります。同じテーマで検索すれば、売上も資格も経験年数も上の人はいくらでも見つかります。
そこで自分と実績を出している人の数字だけを比較すると、いつまでたっても出版できません。
でも、わたしがいいたいのは、
「読者が本を選ぶ理由は、実績の大きさだけではない」ということです。
「自分と同じところで失敗している」
「今の自分より少し先を経験している」
「知りたい過程を具体的に書いている」
そういう著者を選ぶ人もいます。
自分を立派に見せるための実績を作るより、今の自分が事実として書けることから、本のテーマを考える。そこから始めてみてください。
